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・ 序文、目次
概要
多くの優れた彫刻と建築物を生み出したベルニーニは、ローマが生んだバロック芸術の代表的な巨匠である。
ベルニーニについて書かれた本はあるが、作品を年代順に解説して時代背景を簡単に添えるにとどまり、ベルニーニそのものにはほとんど関心を払っていない。あるいは理想化され、個性を奪われたベルニーニ像を伝えようとしている。それゆえ、その作品の持つ影響力と人気にもかかわらす、人間としてのベルニーニを知る人は少ない。さらに、自己防衛に長けていたベルニーニが自分の意見や個人的な生活に関する記録を残さなかったことも、その一因である。
本書の主要な目的は、「ベルニーニその人」、つまり検閲を経ない、血と肉を備えた人間を描くことではあるが、彼の職業生活における画期的な事件や家族の歴史についてもページを割いている。また、ベルニーニだけでなく、十七世紀のローマ人の生活に、間接的であっても影響を与えた大きな出来事や社会問題、人物についても言及している。教皇ウルバヌス八世が述べた有名な言葉「ベルニーニはローマのために作られ、ローマはベルニーニのために作られた」の通り、ベルニーニの生涯は、彼の愛したローマという都市と密接に関わっていた。したがってこの伝記は、ベルニーニという芸術家の伝記であるばかりでなく、十七世紀のローマの肖像でもある。
読者は、その人生が、スキャンダル、陰謀、そしてさまざまな人間関係のドラマに溢れた、常に愛すべきとは言えなくても、実に興味深い人物について多くを知ることができるだろう。「バロック・ローマの芸術家のなかで、激烈な気性を持ち、反社会的、いや犯罪的とさえ言える行動に身を任せたのはカラヴァッジョだけではない。読者よ、ご用心を」。
目次
序文――初めて英語で書かれたベルニーニの伝記
謝辞
バロック・ローマにおける貨幣価値、賃金、生活費
略記
第一章 ナポリ生まれの神童
懐妊した十二歳の花嫁
この伝記の資料について記すために一息いれよう
「悪魔の棲む楽園」での幼年時代
一六〇六年、ローマへの移住
少年ベルニーニに魅せられる
「頼むから、本音を隠してくれたまえ」
成人したベルニーニ
「シピオーネ枢機卿のあそこが、欲しいものを手に入れてなぜ悪い?」
優しさと真実と
歓喜するベルニーニ
第二章 至高のインプレサリオ
美髭のウルバヌス
「彼の時代のミケランジェロ」
火は決して制御しやすいものではない
「蛮バル族バリがなしえなかったことを、バルベリーニがやってのけた」
「クーポラが落ちる!」
一族の長
死との遭遇
愛人の顔を切りつけさせたベルニーニ
ベルニーニが花嫁を娶る
「偽物を本物に見せる」
イングランドにまで伝わった名声
誰がために鐘は鳴るのか、それとも鳴らないのか
第三章 ベルニーニの苦悩と恍惚
「かくも粗野で見苦しい教皇」
ベルニーニは沈み、聖テレジアは浮揚する
「力を失ったばかりでなく、自分を卑しめて」
「何か途方もないものに心を動かされない限り」
ラ・ピンパッチャが救いの神となる
臆病そうな公爵の英雄的な胸像
教皇の遺骸は腐敗するまま放置される
第四章 ベルニーニと教皇アレクサンデル七世
教皇と建築家というドリーム・チーム
「皆の噂によると、彼女は両性具有者だそうだ」
またも襲った黒死病
イエズス会の宝石
ベルニーニとボッロミーニのライバル関係の最終章
第五章 ルイ十四世の宮廷におけるローマの芸術家
国際政治の駒として翻弄されるベルニーニ
椅子駕籠に乗せられてアルプスを越える
「小さい話などしないでいただきたい!」
すすり泣くベルニーニ
「あいつは疫病に襲われるがいい!」
長く、厄介な余波
第六章 「我が名声は衰えてゆくだろう」
しばしの安堵の溜息
カサ・ベルニーニに対する投石
彫像の蔭のソドミー
「すべての方向に毒を吐く龍」
クリスティーナ女王が窮余の策に一役買う
ときおりの称賛
「あの乳房を覆え!」
「クーポラが(またもや)落ちる!」
華々しくはなく、消え入るように
訳者あとがき
参考文献
原注
索引
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